4.ありがとう / 君にお礼を言いたかったこと
Side D
「ドンへオッパって、ほんとーにどうしようもない人ですね。」
さらりと冷たく言い放たれて、俺は思わず肩を竦める。
まさか、俺はこの子にまで嫌われたいたのか。
「大体にして、そこまで言われるまで、自分が言っちゃいけないこと言ってるって気づかなかったんですか?」
「ちょ、ちょ、クリスタル待って…」
「ったく、記憶力ない人って一番嫌われますからね、ドンへオッパみたいな。」
後輩のクリスタルとバライティで共演をして、
せっかくだからとこの間あったヒョクチェとの出来事を相談してみたはいいが、
ここまでずけずけと言われるなんて。
やっぱり俺、嫌われている気がする、絶対。
「私だったら、オッパのこと一発殴ってます。ヒョクチェオッパって天使ですね。」
「え、な、そこまで!?」
「だって最低です。宿舎を出ることは別として、あれだけいいこと言っておいて忘れるとか…」
あれからヒョクチェとは目も合わせていない。明日は引っ越し業者が来る日だというのに。
宿舎を出る考え自体は変わっていない。でも、ヒョクチェがあそこまで傷つくなんて思ってもいなかった。
「お前なしじゃ生きていけない」、確かに俺はそう言った。
今でこそ少しは自立してきているけれど、ほんのちょっと前までは、俺は完全に、
ヒョクチェなしじゃ生きていけない人間だった。
人は成長する。それを自分にあてはめてほしいわけじゃないけど、俺だって、
いつまでも一人じゃ、ヒョクチェなしじゃ何もできない子供じゃない。
「ヒョクチェオッパ、本当に傷ついてるんだろうなぁ」
「…」
「…ヒョクチェオッパも、ドンへオッパなしじゃ生きていけないって言ってたし」
「えっ!?」
「嘘ですよ、嘘。」
「えぇ!何それ、酷い…」
今ちょっと期待した。それなら心から土下座するし、
今すぐ会いに行って、抱きしめて、謝って、
それから、「俺はまだ、ヒョクチェなしじゃ生きていけないんだよ」って、優しく囁こうと思ったのに。
そんな資格なくても、あの頃確かに、ヒョクチェだけが俺の全てだった。
嘘じゃない。人は成長するけど、俺の視界いっぱいに広がるヒョクチェの笑顔が、
今だって俺の全てだ。
「あ、そうだドンへオッパ。」
「ん?」
「いいこと、教えてあげましょうか?」
ニヤリと綺麗に笑ったクリスタルに、俺は大きく頷いた。
普段こそ素っ気ないけど、こういう時にとっておきの情報を教えてくれるのが、彼女だ。
俺がじっとクリスタルを見つめていると、彼女は楽しそうに、高く美しい声で言った。
「これ、ジェシカオンニから教えてもらったんですけど、」
「うん」
「オッパたちがデビューしてすぐ、練習生だったオンニが、
ヒョクチェオッパと話してた時らしくて。」
「うん」
「『ドンへは俺がいないと何もできなくて、どうしようもない奴なんだ』って、言ってらしいですよ。」
「え…それで?」
「それでその後、『でも俺はドンへに支えられてるし、俺が辛いとき、ドンへはいつだって
傍にいてくれるんだ』って。」
「う、ん…」
「それで、『俺だって、いつもドンへを支えたいし、辛いときいつも傍にいてくれる奴だって、
ドンへに思われたい。俺、ずーっと一緒にいたいって思ってるんだ。多分、ドンへも。
ていうか、そうだったら嬉しい。』だって。」
クスリと笑ったクリスタルが、「まったく、世話が焼けますね」、と小さく呟く。
でも俺にはそんな皮肉よりも、今、彼女が言ったことが本当かどうか、そればっかり考えていた。
ヒョクチェがそんな事言うなんて。絶対にあり得ないような話だけど、信じたい。
俺だっておんなじだ。辛いときはいつもヒョクチェが傍にいてくれて、
ずーっと一緒に、いたい。
嬉しさとか愛しさとか、言葉にできないほどの感情が込み上げてくる。下手したら泣きそうだ。
ヒョクチェ、ヒョクチェ。
ずっと変わらない。俺は、変わってないよ。
伝えたい、今すぐに。でも、本当に伝えなくちゃいけないことは、もっと他にある気がする。
ありがとう、なのかな、それって。
Side D
「ドンへオッパって、ほんとーにどうしようもない人ですね。」
さらりと冷たく言い放たれて、俺は思わず肩を竦める。
まさか、俺はこの子にまで嫌われたいたのか。
「大体にして、そこまで言われるまで、自分が言っちゃいけないこと言ってるって気づかなかったんですか?」
「ちょ、ちょ、クリスタル待って…」
「ったく、記憶力ない人って一番嫌われますからね、ドンへオッパみたいな。」
後輩のクリスタルとバライティで共演をして、
せっかくだからとこの間あったヒョクチェとの出来事を相談してみたはいいが、
ここまでずけずけと言われるなんて。
やっぱり俺、嫌われている気がする、絶対。
「私だったら、オッパのこと一発殴ってます。ヒョクチェオッパって天使ですね。」
「え、な、そこまで!?」
「だって最低です。宿舎を出ることは別として、あれだけいいこと言っておいて忘れるとか…」
あれからヒョクチェとは目も合わせていない。明日は引っ越し業者が来る日だというのに。
宿舎を出る考え自体は変わっていない。でも、ヒョクチェがあそこまで傷つくなんて思ってもいなかった。
「お前なしじゃ生きていけない」、確かに俺はそう言った。
今でこそ少しは自立してきているけれど、ほんのちょっと前までは、俺は完全に、
ヒョクチェなしじゃ生きていけない人間だった。
人は成長する。それを自分にあてはめてほしいわけじゃないけど、俺だって、
いつまでも一人じゃ、ヒョクチェなしじゃ何もできない子供じゃない。
「ヒョクチェオッパ、本当に傷ついてるんだろうなぁ」
「…」
「…ヒョクチェオッパも、ドンへオッパなしじゃ生きていけないって言ってたし」
「えっ!?」
「嘘ですよ、嘘。」
「えぇ!何それ、酷い…」
今ちょっと期待した。それなら心から土下座するし、
今すぐ会いに行って、抱きしめて、謝って、
それから、「俺はまだ、ヒョクチェなしじゃ生きていけないんだよ」って、優しく囁こうと思ったのに。
そんな資格なくても、あの頃確かに、ヒョクチェだけが俺の全てだった。
嘘じゃない。人は成長するけど、俺の視界いっぱいに広がるヒョクチェの笑顔が、
今だって俺の全てだ。
「あ、そうだドンへオッパ。」
「ん?」
「いいこと、教えてあげましょうか?」
ニヤリと綺麗に笑ったクリスタルに、俺は大きく頷いた。
普段こそ素っ気ないけど、こういう時にとっておきの情報を教えてくれるのが、彼女だ。
俺がじっとクリスタルを見つめていると、彼女は楽しそうに、高く美しい声で言った。
「これ、ジェシカオンニから教えてもらったんですけど、」
「うん」
「オッパたちがデビューしてすぐ、練習生だったオンニが、
ヒョクチェオッパと話してた時らしくて。」
「うん」
「『ドンへは俺がいないと何もできなくて、どうしようもない奴なんだ』って、言ってらしいですよ。」
「え…それで?」
「それでその後、『でも俺はドンへに支えられてるし、俺が辛いとき、ドンへはいつだって
傍にいてくれるんだ』って。」
「う、ん…」
「それで、『俺だって、いつもドンへを支えたいし、辛いときいつも傍にいてくれる奴だって、
ドンへに思われたい。俺、ずーっと一緒にいたいって思ってるんだ。多分、ドンへも。
ていうか、そうだったら嬉しい。』だって。」
クスリと笑ったクリスタルが、「まったく、世話が焼けますね」、と小さく呟く。
でも俺にはそんな皮肉よりも、今、彼女が言ったことが本当かどうか、そればっかり考えていた。
ヒョクチェがそんな事言うなんて。絶対にあり得ないような話だけど、信じたい。
俺だっておんなじだ。辛いときはいつもヒョクチェが傍にいてくれて、
ずーっと一緒に、いたい。
嬉しさとか愛しさとか、言葉にできないほどの感情が込み上げてくる。下手したら泣きそうだ。
ヒョクチェ、ヒョクチェ。
ずっと変わらない。俺は、変わってないよ。
伝えたい、今すぐに。でも、本当に伝えなくちゃいけないことは、もっと他にある気がする。
ありがとう、なのかな、それって。
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